製品情報 エアーケーブル/AirCable イントロダクション

エアーケーブル AirCable 開発ヒストリー

すべてのはじまり

一介の電気工事業者である弊社が、なぜ、オーディオの電源に関わるようになったのか?すべてはレコーディングエンジニア赤川新一氏と知り合ったことに始まります。2000年当時、赤川氏はサウンド&レコーディングマガジン誌上でHow To Build Your Studioというコラムを連載され、インターネット黎明期、赤川氏の主宰するStrip Studio WebサイトのBBSは貴重な情報交換の場として活況を呈していました。私自身もそこで電源ファシリティーに関する発言を多くさせていただく機会を得、電源とオーディオの関係性に興味を持ち始めたことが全ての入口でした。

ピュアオーディオの世界でも電源ケーブルによる変化が一般的な認識として広まり、アクセサリ雑誌が発刊するのも丁度この頃。私自身の趣味でもあった自宅録音の中、本業である電気工事用の電線を各種試し、認識を深めていったのは当然の流れでした。

興味深い事実

そこで面白い事実に遭遇することとなります。

一般的に言うところのFケーブル。電気工事業界では通称VAと呼ばれるVVF、EM-EEFケーブル各種をオーディオ機器、広まり始めたPCによるハードディスクレコーディング用のオーディオインターフェイスに電源コードとして使ってみたところ如実に変化、差を感じることができました。さて、何が原因だったのか。

違いは絶縁体の材質

「ケーブルの絶縁体による変化」それが最も大きな要因ではないか?という仮説がこの時、浮かび上がりました。その時の具体例は以下の通り。

VVF(ビニル絶縁平型ビニルシースケーブル)という最も一般的な屋内配線材とEM-EEF(ポリエチレン絶縁平型ポリエチレンシースケーブル)を使用したとき、以下のような結果を得ることができる。

  • VVF:ヴォーカルを中心とした中域が明瞭になる。低域、高域はややぼやけた印象。
  • EM-EEF:低域、高域がくっきりし、一見(一聴?)ハイファイになった印象。ただ、中域の解像度は下がる。

構造上、上記電線は同じ形状です。違いは導体を直接覆う絶縁体、さらにそれを覆う被覆(シース)。この事実が意味すること。それは「絶縁体固有の比誘電率が何かしらの影響を与えるということ」です。そこに着想を得るならば、最も比誘電率の低い物質に行き着くのは当然の帰結でした。

空気絶縁への道

一般的な産業電線ではコストと性能の両立を考慮し、比較的、比誘電率の低いポリエチレンを用いた電線が広く使われています。特殊用途では比誘電率の極めて低いテフロンなどのフッ素樹脂を用いた電線、さらにそれらを発泡させ空気の含有率を高めた製品などが多く存在しますが、もっとも比誘電率の低い物質の一つ「空気」を絶縁材とした(電力)ケーブルは特別高圧設備などで利用される六フッ化硫黄ガス(SF6)を封入した「管路気中ケーブル」、鉄塔の送電線(裸導体)以外には存在しません。何故か。

それは、ケーブルに要求される屈曲性と気体による気中絶縁の両立が非常に困難なためです。

気中絶縁ケーブルの着想はすぐに得ることができました。図面を起こし、特許出願までの流れは比較的順調でしたが、それを実物として実現することは困難を極めました。

Digidesign ProTools HDの導入

前後して、検証用にDigidesign ProTools HDを導入することとなります。プロフェッショナルの現場で主流になりつつあった製品を使い、実際に実機で検証することが急務であると考えたためで、ProTools HDを中心としたシステムを導入することにより、より効果的な検証作業が行え、プロフェッショナル達と認識を共有できたという点は非常に大きなメリットでもありました。現在、ProTools HDはディファクトスタンダードとしての確固たる地位を築いています。

試作の開始

着想を得て以降、試作を含め、製造を依頼できる業者を探すものの、特殊な構造であったため、話に応じてもらえる業者を見つけることすらできないまま1年近くの時間が経過していました。そんな中、ある電線メーカーが製造に名乗りを挙げてくれましす。ここから、実際のケーブル試作が始まることとなったのです。

空気絶縁という方向性

まずは基本的な空気絶縁の構造のテストから。早速、テスト品をStrip 赤川氏、姫神 星吉紀氏にも手渡します。後日、インプレを伺うと、非常に好印象。どうやら「空気絶縁」というディレクションは正解だったようでした。

電気用品安全法という壁

程なくブラッシュアップしプロトタイプの製作に取り掛かります。製品は程なく完成しましたが、ここで最大の壁、PSE(電気用品安全法)の認定取得という問題に遭遇します。

いわゆるPSE問題で世間が騒然としていたのは記憶に新しいところ。一時は多くの電気製品が販売の憂き目に遭いましたが、多くは簡易的な絶縁試験を行うことで事態を打開しました。さらに現在ではこの点において形骸化してしまっています。しかし、電源ケーブルの場合はそう簡単にはいきません。なぜなら、より厳密な試験が課せられる特定電気用品に含まれるからです。

監督官庁の内諾を得、ある認定機関に持ち込むことになります。しかし、申請から数ヶ月経ても一向に返答がない。返答があったのは半年後。改善要求という形での返答でした。その後、単発で何度も改善要求が出され、1年近くの歳月が過ぎようとしていました。

そこには何かしらの意図が垣間見え、このままでは認定を取得することは困難であると考えたのは自然な流れです。そこで一旦、申請を取り下げ、一念発起、別の認定期間にPSEの認定を申請することにしましたが。結果的にこの判断は正解でした。

申請から1ヶ月後、ついにエアーケーブルがPSEの認定を取得したのです。

プラグとの勘合の問題

これと並行してプラグ勘合部の開発も行われました。中空部を持つケーブルの構造上、通常のプラグでは十分な固定ができません。極端な曲げ方向の力が生じると、プラグハウジング部からケーブルのシース部分が抜けてしまうという問題が判明していたため、独自の固定方法を開発することは必要不可欠でした。(プロトタイプには米Marinco社製のプラグを使用していました。)

漏斗状のストレスコーンとハウジングによって、ケーブルのシース、シールドを挟み込み固定するという独自の構造。(特許出願中)プラグ固定機構についても基本構造の起草から試作品の製作まで1年近く要しましたが、「抜けない構造」の開発も実を結ぶこととなりました。

開発開始から5年を経て

紆余曲折を経て登場することとなったエアーケーブル。

革新的なのは構造だけではなく、オーディオ用電源ケーブルとしての性能もまた革新的なものです。是非、エアーケーブルの効果を実感してください。

また、開発の途上で「比較試聴ができたら面白いね。」という会話の中から実現したのが比較試聴音源ダウンロードです。レコーディングの過程において全て録り分け、さらに、24bit/96kHzマスター音源を比較試聴用に提供するという恐らく例がない企画だと思います。精緻に調整されたモニター環境であれば、その効果が容易にお分かりいただけると思います。

オーディオ機器用電源ケーブルの価値を世に問い直すエアーケーブル。
いよいよ始動します。